ブログ

独ワイヤーカードの不正とは!?

2020年06月30日
タグ:リスクマネジメント内部統制構築

こんにちは、浅野です。

さて先週から独ワイヤーカードに関する粉飾決算のニュースが流れています。

CEOが粉飾決算に関わったとして逮捕されたり、同社監査法人である大手会計事務所のEY(Ernst & Young)への責任問題が議論されていたり、日本のソフトバンクが同社に出資していたなど、話題が盛り上がっていますね。

なかには天下の大手会計事務所アンダーセンを解散に追い込んだ、あの”エンロン事件”に匹敵する事件と書いている記事もありました。


ただ恥ずかしながら私、このワイヤーカード、知りませんでした。。。監査法人時代、ドイツ企業を担当していたこともあり割とドイツ人の友人も多く、ドイツビールとソーセージにはちょっと詳しいつもりだったのですが。。汗


ということで、内部統制コンサルタントとしては、この機会にワイヤーカードがどんな企業で、今回の不正がどんな問題なのか、ちょっとだけ調べてみました(データソースは下記に記載)。


■ワイヤーカードとは?

・店舗やオンライン、携帯電話で、クレジットカードや米アップル(Apple)のアップルペイ(Apple Pay)、米電子決算大手のペイパル(PayPal)などでの支払いを導入できるオンライン決済サービスを主力事業としている。また、オンライン決済サービスから得たデータに基づく分析サービスも提供している。

・顧客は全世界で約30万社に上り、中国のモバイル決済システム「アリペイ(Alipay)」や「微信(WeChat、ウィーチャット)」、アップルやグーグル(Google)など大手と取引をしている。

・2005年にはドイツ・フランクフルト証券取引所に上場、2018年にドイツ株価指数(DAX)の主要構成銘柄となった。

なるほど、さまざまな企業のオンライン決済サービスを利用できるサービスとその顧客データ分析で瞬く間に成長した企業なんですね。


■粉飾決算の概要
・同社ではバランスシートの4分の1に相当する19億ユーロ(約2280億円)が所在不明になっていたが、同社は22日、現金は「存在していなかった」可能性があると認めた。

・19億ユーロは、フィリピンの2銀行の信託口座に預けられていたとされていた。フィリピン中央銀行は21日、不明金は同国の金融システムに流れ込んではいないと明らかにした。

・2019年初めにはワイヤーカードの市場価値は約170億ユーロ(約2兆円)に達したが、今回の不正疑惑を受け20億ユーロ(約2400億円)にまで急落した。


■発覚の経緯
・2019年にフィナンシャル・タイムズ(FT)が内部告発者からの資料提供を基に収益の不正な水増し疑惑を指摘した。これを受けてワイヤーカードが監査法人KPMGに依頼した調査結果が4月に出ている。しかし、KPMGが求めた16~18年の取引データは受け取ることができず、「不正を示す証拠は見つからなかったものの、真相解明に必要な書類も十分入手できなかった」と結論づけた。


■手口は?

報告書内容や報道を総合すると事業上のパートナーを経由した取引が不正の舞台となった可能性が高そうだ。

クレジットカードやスマホ決済の加盟店の開拓や審査、データ管理をする業務を「アクワイアリング」と呼ぶ。ワイヤーカードはドイツ国外でアクワイアリングで契約していたいくつかのパートナーとの取引で、収入を架空もしくは過大に計上していた可能性がある。

例えば、ドバイのパートナーだった「アルアラム ソリューション プロバイダー」はワイヤーカードが顧客を紹介したドバイの決済処理業者とされていたが、既に清算手続きに入っている。

売上高を水増しした結果、貸借対照表上の帳尻を合わせるために、存在しない「19億ユーロ」の現金を計上したのか、それとも現金はあったが流用などで消失したのかは捜査の結果待ちとなる。

■浅野の雑感(疑問)
・B/Sの4/1が架空の預金ってやばいですね。。不正が生じるときには3つの背景(動機・機会・正当化)があると言われます、どんな背景で、こんな大胆な不正会計が起きたのでしょうか?


・預金残高のチェックなんて、監査法人の監査手続のなかでも最も簡単かつ証拠力の強い手続なのに、なぜ監査法人は発見できなかったのでしょうか?これはさすがに監査法人への風当たりは厳しいと思います。


・やはりトップ主導の不正だったでしょうのか?内部統制の限界だったのでしょうか?


・内部通報という自助作業は効かなかったのでしょうか?なぜいきなり内部告発という最悪の事態になってしまったのでしょうか?


今回調べた限りですと、具体的な手口の真相はまだ明らかになっていませんでしたので、これからの原因解明が待たれるところです。

データソース:
AFP: https://www.afpbb.com/articles/-/3289968
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/nkd/company/article/DisplayType=2&ng=DGKKZO60753280U0A620C2EE9000&scode=9984



※(株)Collegia Internationalでは、豊富な経験とノウハウのもと、上場準備中の企業様はもちろんのこと、既に上場されているものの、内部統制対応を見直したい企業様にむけた、内部統制文書化支援、整備・運用評価支援、見直し支援コンサルティングを提供しております。
お困りごとがございましたら、お問い合わせより、お気軽にご相談くださいませ!

浅野 雅文アサノ マサフミ
公認会計士 / 税理士
クラス 代表パートナー