コラム
トップの不正は内部統制で防げるのか!?
こんにちは、浅野です。
さて日産のゴーン元会長が逮捕され、世間をにぎわせていますね。
容疑は、「有価証券報告書」における自身の報酬に関する過少申告、虚偽記載だそうです。
本人は現時点では容疑を否認しているとのことで事実関係はまだ不明。これからの捜査に注目です。
ただ仮に虚偽記載が事実となると、公認会計士で内部統制コンサルタントの当職としては、
・当該虚偽記載が重要な虚偽記載になるのか?(上場廃止基準への抵触)
・会計士による財務諸表監査の対象なのか?(監査法人に責任はないのか?)
・内部統制報告書への影響は?(訂正報告は不要なのか?)
なお先日の日経新聞の記事によれば、役員報酬記載は会計士監査の対象ではないとのことです。
が、もし何十億円もの報酬費用がP/L計上されていないのであれば、やはり会計士監査の対象になるのではないかな、とも思うのですがどうなんでしょうかね。
また、本件がトップ主導による不正であったとすると、日産社内での内部統制では抑制できなかったことを意味します。
たしかに本件は内部通報で発覚はしていますが、それはルノーとの統合を阻止するという特殊な背景・思惑があったからだとも報道されていますので、そういう意味では、ゴーン氏の前に通常期待される内部統制は機能しなかったのでしょう。
じつは一般的に内部統制には、(内部統制が機能しない)”4つの限界”があるとされ、その一つがまさに「 経営者自身による不正」なのです。
ご参考まで、今回は内部統制の”4つの限界”について、下記で簡単にご紹介しておきます。
限界その1:判断の誤り、不注意、共謀による限界
内部統制の多くは、人によって実施されます。人が介在する以上、統制実施者が時には判断を誤ることもあるでしょう。そうした場合には、業務が正確に遂行されなくなり、内部統制を整備した目的が達成されない可能性があります。
また、内部統制の方法の1つとして、内部牽制を効かすことができるように、1つの業務を複数人の担当者によって実施させることがあるのは先述のとおりです。しかしながら、結局は担当者同士が共謀することによって内部牽制が機能しなくなり、内部統制を整備した当初の目的が達成されない可能性があります。
限界その2: 環境の変化、非定型取引による限界
内部統制は、当初予定されていた処理には対応できますが、急な環境の変化に対応できずに処理を誤ったとしても、その誤りを見過ごし、当初の目的を達成することができない可能性があります。
例えば、1日に何度も行われるような日常的取引については、処理担当者も承認者も取引についてよく理解し、これに関する処理とその正確性の確認作業に慣れているはずです。そのため、処理を誤ったり、また誤った処理を見過ごすリスクは低いと考えられます。
けれども、めったに発生しない異常取引が行われた場合には、処理担当者も承認者も取引を十分に理解できないまま処理を行ってしまうかもしれません。その結果、当該取引に関する処理を誤ったり、誤った処理を見過ごしてしまう可能性があります。
限界その3:費用対効果による限界
内部統制は、業務を適切に遂行できるように、経営者によって社内に設けられるものです。そのため、組織の事業目標の達成を阻害するほどに過度の費用をかけて内部統制を整備・運用することはナンセンスといえます。
そのため経営者は、費用対効果の観点から、内部統制を整備・運用することによって得られる便益と、これを整備・運用することによる費用を勘案して内部統制を整備・運用する範囲を決定することとなります。裏を返せば、内部統制は常に整備・運用にかかる費用の制約を受けるということです。
限界その4: 経営者による不正・内部統制無効化による限界
まさに今回の日産のケースではないでしょうか。
内部統制は、経営者によって社内に設けられる仕組みに過ぎないため、経営者自身による不正行為には有効に機能しないという弱点があります。すなわち、経営者が不正を指示した場合、部下である従業員はこれを指摘することができないため、たとえ業務プロセスレベルでしっかりと内部統制を整備・運用していたとしても、意味がなくなってしまう可能性があるということです。
トップに対して、社内の内部統制が有効に機能しないのは、日産に限らず、最近の企業不祥事の多くが経営トップ主導による事件であったことを考えると、実によく理解できますね。
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