コラム
(第1回)B/S、P/Lから考える!【Collegia流】コロナショック下で企業が生き抜くための資金繰り対策
1.はじめに
皆さん、こんにちは。
Collegia Internationalの浅野でございます。
まずはこのたびの新型コロナウィルスに罹患された皆様と、感染拡大により生活に影響を受けられている皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
このいわゆる“コロナショック”により、世界的に人や物の動きに制限がかかってしまったことで、エンターテインメント業や飲食業をはじめ、物流、製造業、サービス業など、実に様々な企業において多大なビジネス上の影響を受けておられることと思います。
このような未曾有の世界的経済危機下で先の見えない不安の中、企業経営者は自社の社員の生活を守り、また事業存続のため、必死に事業計画の見直しや、資金繰り計画の見直しに日々悩んでおられるのではないでしょうか(かくいう私も一零細企業の経営者として皆様と同じように現在進行形で不安と戦っております、お互い頑張りましょう!)。
その中でも、資金繰りの打ち手としては、下記二つのアイデアが真っ先に思い浮かぶので、この二つだけを検討されている経営者は多いのではないかと予想しています。
a) 銀行融資(借入)
b) コストカット
たしかに銀行融資(借入)もコストカットも、資金繰りの打ち手としては最もポピュラーですし使い方を間違えなければ大変有効です。しかしながら中には、これら2つの打ち手に限界を感じ、活用することができず、絶望感に包まれている企業も少なからずあるのではないかと思われます。
a) 銀行融資の限界
- すでにめいっぱい借入をしてしまっており、これ以上の追加融資は難しい(倒産リスクが高い)
- 業績回復のめどが立たない中で、いつか返さなければならない借入はしたくない(できない)
- 政府系の特別融資制度(※)を利用したいが、要件を満たすことができず利用できない
※新型コロナウイルス感染症特別貸付
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html
b) コストカットの限界
- もともと不要なコストがないので、これ以上コストカットできる余地がほとんどない
- 具体的にどのコストをどれだけカットしたら資金繰りが改善するのかわからない
- コストカットにより、売上減少や社員流出など、逆に業績悪化を加速させてしまう不安
そこで本コラムでは、本日より(ほぼ)毎日、全5回シリーズ(当初3回のつもりでしたが汗)で
☑ 借入とコストカット以外の資金繰り対策の例をご紹介しながら、
☑ 企業自身が資金繰りの打ち手を体系的に洗い出し、検討できるようになるために、
普段弊社が会計税務コンサルタントとして顧問先企業、特に中小企業に資金繰りの打ち手に関するアドバイスを行う際の、弊社独自の基本的な思考法ないしフレームワークを(こっそりと)ご紹介・共有させていただきたいと思います。
資金繰り対策は、企業ごとの資産負債、損益の状況によって、最善の打ち手は異なります。
そのため、本コラムで紹介する方法が、必ずしも貴社にフィットするものばかりとは限りません。
しかしながら、自社の財務状況について誰よりも詳しい経営者の皆様が、体系的に自社の資金繰り施策を洗い出し、検討するためのたたき台としては役に立つのではないかと期待します。
歴史的経済危機下で生き残りをかけ必死に戦っておられる、日本企業経営者、とくに中小・零細企業経営者の、資金繰り施策のアイデア出しの一助になればと考えておる次第です。
■本コラムのシリーズ目次(予定)
第1回:一般的なキャッシュフローマネジメント手法(C/Sアプローチ)
第2回:B/Sから考える資金繰り施策(B/Sアプローチ)~前編~
第3回:B/Sから考える資金繰り施策(B/Sアプローチ)~後半~
第4回:P/Lから考える資金繰り施策について(P/Lアプローチ)~前編~
第5回:P/Lから考える資金繰り施策について(P/Lアプローチ)~後半~
また、過去コラム【資金繰りの問題に対する適切なアプローチとは】では、資金繰りの改善状況を継続的にモニタリングするための方法についてご紹介していますのでご参考になさってください。
2.C/SアプローチとB/S、P/Lアプローチ
資金繰りを改善するということは、“手元の資金を増やす”、ことにほかなりません。
そして“資金=キャッシュ”と考えると資金を増やすということは“キャッシュを増やす”こととほぼ同義です。
(※実際にはキャッシュの会計上の定義は現預金+αでややこしいのですが、ここでは“現預金”と考えて頂いて差し支えありません。)
また前提として、キャッシュを“増やす”というのは、キャッシュの流入(キャッシュインフロー)を増やすか、キャッシュの流出(キャッシュアウトフロー)を減らす、またはその両方によってのみ達成される点の理解が必要です。
① 一般的なキャッシュフローマネジメント(C/Sアプローチ)
「なるほど、資金繰りとは、キャッシュフローマネジメントのことか」、と考えると、まず最初に思い浮かぶのが”キャッシュフロー計算書”です。
企業の財務報告書類である財務諸表(決算書類)の中には、皆さまが慣れ親しんでいる“貸借対照表(Balance Sheet、以下B/S)”、“損益計算書(Profit and Loss Statement、以下P/L)のほかに、“キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement、以下C/S)”という書類があります。
C/Sは、後述のB/SやP/Lで表現される財政状態、損益情報だけではわからない、キャッシュの動きを表すことができる財務諸表です。
たとえば、「P/L上利益は出ているのに、その大半の売掛金が回収できずに倒産寸前」、であるとか、「キャッシュが増加しているけど、借入によって増えているだけで本業のキャッシュはマイナス」、といったB/SやP/Lではわかりづらい企業の資金の状況がわかるわけです。
C/Sは、大きく分けて以下の3つの表示区分に分かれています。
① 営業活動によるキャッシュフロー・・・本業でキャッシュフローを表す
② 投資活動によるキャッシュフロー・・・貸付や株式などの投資によるキャッシュフローを表す
③ 財務活動によるキャッシュフロー・・・社債や借入などによるキャッシュフローを表す
C/Sは、主に公認会計士監査を受けるような比較的規模が大きな企業が作成しますので、C/Sを作成している企業においては、過去のC/Sの各項目を見ながら、改善インパクトの大きい項目を特定し、優先的に改善対応を図っていく、また、(少し難易度が高いのでプロの力が必要かもしれませんが)事業計画・月次予算等から将来の月次C/Sを推測し、それを基に同様の検討を行うことが有効かと思います。
ただ、「うちは監査なんか受けてないし、決算書だって税務書提出書類だけでキャッシュフロー計算書なんか作ったことも、見たこともないよ!」という企業も多い(というか大多数)と思います。
そのため、次回以降ではC/Sを作成していない企業でも、網羅的に自社の資金繰り施策を検討できる考え方、その名も『Collegia流 B/S, P/Lからの資金繰り検討フレームワーク』をご紹介していきます。
(ほぼ)毎日更新していくつもりですので次回をお楽しみに!
つづきはこちら
https://www.collegia-intl.com/column/200414.html
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