コラム

(第2回)B/S、P/Lから考える!【Collegia流】コロナショック下で企業が生き抜くための資金繰り対策

2020年04月14日
タグ:Collegiaの活動経営リスクマネジメント


3.B/Sから考える資金繰り施策(B/Sアプローチ)~前編~

さて今回から、網羅的に自社の資金繰り施策を検討できる考え方、Collegia流 B/S, P/Lからの資金繰り検討フレームワーク』を具体的にご紹介していきます。

まず第2回の今回と第3回では、B/Sから考える資金繰り施策の洗い出し方法、「B/Sアプローチ」をご紹介します。


結論から先に申し上げますと、「B/Sアプローチ」は以下の3つのポイントで資金繰り施策を洗い出すものです。
 ・B/Sを左と右に分けて考える。
 ・左側では、『現預金以外の資産をいかに早く現預金に変えられるか』をひたすら考える。
 ・右側では、『いかに負債を増やすか』、『いかに純資産を増やすか』をひたすら考える。

それではそれぞれ解説していきます!

①B/Sの見方
釈迦に説法かと思いますので、知ってる方は遠慮なくすっ飛ばしていただければと思いますが、念のため最初にB/Sの性質と見方について解説しておきますと、B/S(貸借対照表)は企業の財政状態を表す財務諸表で、大きく左と右の2つのパートに分かれています。



なお会計上、向かって左側を”借方”、向かって右側を”貸方”と呼びます。
しかしながら、”借方”に”貸付金”があったり、逆に”貸方”に”借入金”があったりして大変ややこしいので、本コラムでは借方を”左側”貸方を”右側”と呼ぶことにします。

【B/Sの左側】
 ■主な役割:
  決算期末時点の定点的な資産の有り高、運用状態(ポートフォリオ)を表す
 
 ■主な構成:
  <資産>
  ・流動資産(現預金、売掛金、棚卸資産、前払費用など)
  ・固定資産(建物、機械、器具、ソフト、など)
  ・投資その他の資産(有価証券、敷金・保証金、長期貸付金、長期前払費用など)

【B/Sの右側】
 ■主な役割:
  決算期末時点の定点的な資金調達手段ごとの有り高やバランスを表す
 
 ■主な構成:
  <負債>:他人資本:返さないといけないお金
  ・流動負債(買掛金、未払金、短期借入金など)
  ・固定負債(長期借入金、社債など)
 
  <純資産>:自己資本:返す必要のないお金
  ・資本金・資本剰余金(※株主からの出資金、事業の元手)
  ・利益剰余金(過年度からの繰越利益、当期純利益) 



②B/Sの左側から考える資金繰り施策
 端的に言えば『現預金以外の資産で、すぐに現預金に変えられる資産がないか』という視点で考えます。具体的には以下が考えられます。

1)不要不急資産の売却
 たとえば何年も滞留し倉庫で眠っている在庫でもいくばくかの値段で売れるのであれば、この際たたき売ってでも現預金に変えてしまうという選択肢もあります。

 
また過去のデータなどで、仕入から売上までの期間が長い商品がわかるのであれば、こうした商品については新規の仕入れを少し抑える、または資金繰りが改善するまで我慢しましょう


 こうして在庫をスリム化することの副次的効果として、倉庫保管料も安くなるかもしれません


  そのほか、不要不急の資産、別荘や会員権、その他遊休資産の売却も考えられます。ただしこれらは金額も大きく、なかなか売買が成立しづらい特徴がありますので、いざとなったらすぐに売却できるよう、あらかじめ業者や売却相場、手数料など取引の条件などを調べておくことをお勧めします。


  (例)
   ・在庫の処分
   ・滞留しやすい在庫の新規仕入のストップ
   ・非事業用資産(投資有価証券、会員権、遊休資産の処分)

2)債権の回収、ないし回収期間の早期化
 たとえば売掛金の回収期間を早めてもらうことができないか、顧客と交渉したり、ファクタリング(※)を活用するのも一案です。
 売掛金は、企業の有する債権、B/S資産の中でも比較的金額が大きいケースが多いので、もし売掛金を早く回収できれば、同じ額と期間だけ、借入をするのと同様の資金繰り効果が得られます
 そういう意味では、少しディスカウント(割引)したとても、銀行利息より安かったり、これ以上銀行融資を受けることが難しい企業には、売掛金の回収早期化がおすすめです。
 貸付金の回収も同様に、将来の受取利息を放棄してでも早期回収する、という選択肢も考えられるわけです。

  (例)
   ・現金売上比率の向上
   ・売掛金の回収期間の早期化(ファクタリング※の活用など)
   ・受取手形の取り扱い高減少(廃止)
   ・貸付金を返してもらう
 
  
※ファクタリングとは、売掛金を買い取ってもらうことで、決済日よりも早く資金化できるサービス。

3)その他
 その他、将来の退職金や不測の事態に備えて契約していた保険などの活用も考えられます。

  (例)
   ・費用の前払を減らす

   ・賃借事業所の解約、値下げによる敷金の回収
   ・定期養老など解約返戻金があり、一部資産計上されている生命保険契約の解約もしくは活用(※1)
   ・倒産防止共済掛金等の活用(※2)

    ※1 解除による返戻金の入金。ただし保険によっては、解除せず、一時借入が可能な契約もあります。
    ※2 倒産防止共済掛金の制度により、最大8,000万円の借入ができます。

 ただし、売却により利益が計上される場合(売却額>B/S価額)は税務上の所得となり、課税額が増える方向に作用しますのでその後の税金支払によるキャッシュアウトへの影響にも留意が必要です。



第3回は、「3.➂B/Sの右側から考える資金繰り施策」をご紹介してまいります。

つづきはこちら
https://www.collegia-intl.com/column/2004142.html



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浅野 雅文アサノ マサフミ
公認会計士 / 税理士
クラス 代表パートナー