コラム
(第5回)B/S、P/Lから考える!【Collegia流】コロナショック下で企業が生き抜くための資金繰り対策
4.P/Lから考える資金繰り施策(P/Lアプローチ)~後編~
➂費用削減の優先順位づけ
第5回の今回は、P/Lアプローチによる資金繰り施策検討法のうち、主に費用削減方法にフォーカスして解説していきます。
前回解説した”収益の増やし方”は、顧客など相手方の意思が必要になるため、自分の一存のみで一朝一夕には増やすことが難しいものでした。
しかしながら費用は、法律や契約で縛られている一部の例外項目を除き、基本的には自分の意思のみで明日からでも削減することができるため、まっさきに検討される経営者も多いのではないかと思います。
ただし、削減する項目や順番を見誤ると、資金繰り改善効果がないうえに、売上が落ち込んだり、ビジネスパートナーが離れ事業存続危機につながるなど、削減前よりも経営が悪化するリスクがありますので注意が必要です。
そして費用の中には商品仕入代金のほか、人件費や家賃、水光熱費や税金など様々なものがあります。
では、これらの費用の中でいったいどの費用から削減を検討していくべきでしょうか?
費用削減の優先順位づけについては、企業の在り方によって一概に答えを出すことはできないですが、ここでは一つの考え方として、
1)(近々の)収益獲得・事業存続への貢献度
2)金額的重要性
の2軸を用いた優先順位付けの考え方をご紹介しておきます。
(費用削減の優先順位付けの考え方)
1)(近々の)収益獲得・事業存続への貢献度
削減したら、収益減少に直結したり、事業存続に悪影響を及ぼす可能性が高い費用か否か。
2)金額的重要性
P/L費用の中に占める金額的な割合が重要か否か。
この2軸を使って、4つの象限をつくり、それぞれの象限ごとに、自社の費用でいうと何が当てはまるかプロットしていきながら優先付けをしていくわけです。
【優先度1】
まず金額的に大きく、近々の収益獲得・事業存続への影響が小さい(ないし間接的な)ものから優先的に削減検討していくことをおすすめします。こういった項目は、資金繰り改善効果が大きい割に事業存続への痛手が少ないからです。
(例)
・(オーナー社長の)役員報酬(※1)
・広告宣伝費
・研究開発費
・新規事業のマーケティング費用
※1 税務上、原則として役員報酬は毎月一定額である必要がありますが、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」がある場合は減額が認められます(法人税基本通達9-2-13)
【優先度2】
つぎに(もしくは優先度1と併せて)近々の収益獲得・事業存続へ影響しにくく、金額的には重要でない費用を削減対象としていきます。これらの費目は優先度1と同時に削減対象としても問題ないですが、削減努力の割に資金繰り改善効果が低い点が特徴です。
(例)
・交際費
・会議費
・福利厚生費
【優先度3】
優先度1・2の削減を行っても、なお資金繰り改善施策として十分でない場合には、いよいよ近々の収益獲得・事業存続へ影響しやすい費用の削減を検討していかざるをえません。
ただしこれは”継続的ビジネスパートナーが離れていったり、後日値上げなどの報復を受ける”、”人材が離れていくことでかえってリクルートコストが高くつく”、”労働に関する法律上の問題が生じる”など、痛みやリスクを伴う施策になります。
そのため、いきなり取引を中止したり解雇に踏み切るのではなく、専門家に相談したり、相互協議のもと取引規模を減らしていくなど段階を踏むことが重要です。
また、事業が正常化したら、もと通りの取引条件に戻していきたい意思も併せて伝えておくことが信頼関係維持のためには重要です。
まずは販管費等にしめる金額的割合が大きいものから削減検討しましょう。
(例)
・事業の部分的・一時的縮小 / 閉鎖
・拠点の閉鎖・統合
・人件費の削減
【優先度4】
優先度3の削減でもまだ足りないのであれば、さいごに、金額的には小さく、事業へ影響しやすいものを削減していくことになります。
(例)
・管理諸費
上記の優先順位はあくまで例示です。
その他にも、下記のような評価軸を用いて各優先度の中でさらにスクリーニングをかけることも可能ですし、貴社の実情にフィットした評価軸を組み合わせて削減すべき項目の優先順位づけをしていただければと思います。
(その他の評価軸の例)
・削減の実行難易度
・時間軸
・固定費 vs 変動費
④痛みを最小減にとどめながら費用削減していく方法
基本的には➂のフレームワークに従って優先順位付けしながら費用削減していけば、痛みを最小減にとどめながら費用削減(資金繰り改善)していくことが可能と思われます。
ただしここではさらに踏み込んで、費用の中でも金額的に重要かつ、事業への影響度の高いと思われる”人件費”について、痛みを最小減にとどめながら費用削減していくアイデアとして、”雇用調整による人件費削減”をご紹介しておきます(実行に当たってはかならず法律の専門家のアドバイスを受けていただければと存じます)。
これは一時帰休など、雇用関係を維持しつつ、就業時間の全部または一部について、従業員に自宅待機(休業)を命ずることで、給与の一部を削減する方法です。
労基法上、「使用者の責に帰すべき事由」となる場合、「平均賃金の100分の60以上」の休業手当の支払いが必要ですから、逆にいえば企業側としては給与の40%の人件費カットが可能となるわけです。
さらに第4回でも紹介しましたが、一定の条件を満たす事業者については、国の雇用調整助成金制度を活用することで、休業手当の最大2/3を補填することが可能です(※20/4/1~6/30まではコロナ特例措置として、最大9/10を補填)。
■通常の雇用助成金活用ケース
■コロナ特例措置の助成金活用ケース(20/4/1~6/30)
このように助成金の活用により、通常時と比べ、なんと従業員を維持したまま最大80%(特例措置の場合94%)のコストカットが可能となるわけです。
(雇用調整助成金)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
5.まとめ
全5回にわたってお送りしてまいりましたが、最後までお読み頂き本当にありがとうございました。
この原稿を書いている最中も東京では1日の感染者数が最高を更新したとの報道が流れ、(私も含め)経営者の皆様もいまだ先行きが見えない不安が続いていることと思います。
ただ、この未曾有の経済危機という同じ事象でも、”ピンチはチャンス”ととらえると、少しは前向きな見方ができるのではないかと思っています。たとえば、これを機に資産や事業の整理をしたり、働き方を変えることで、事業環境が正常化したときには、もっと強い企業になっているのではないか、とも思うわけです。
本コラムでご紹介した資金繰り施策の案は必ずしもすべての企業に通じるものではないかもしれません。しかしながら本コラムでご紹介した『Collegia流 B/S, P/Lからの資金繰り検討フレームワーク』は、皆さまが自社にフィットした資金繰り策を探していく際にきっと役に立つのではないかと思います(下記で紹介した内容を一覧化しておきますのでよろしければご活用ください)。
この危機を乗り越えた先にもっと強い企業になっていられるように。いまは何としてでも生き残るべく、一緒に頑張っていきましょう!
2020年4月17日
㈱Collegia International 代表取締役 浅野雅文(公認会計士・税理士)
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